
A24が、また一本やってくれた。
3月13日にアメリカで劇場公開されたホラー映画『Undertone』が、公開から数日でRotten Tomatoesのスコアを着実に伸ばし続けている。批評家スコア(Tomatometer)は公開前時点で88%を記録。現在は72〜76%へと若干落ち着きつつも、制作費わずか50万ドル(約7,500万円)に対して初日だけで430万ドル(約6億5,000万円)超の興行収入を叩き出しており、A24にとって2026年序盤の台風の目となっている。
本作は、カナダ人監督イアン・トゥアソンの長編初作品。主演はNetflixドラマ「ハンドメイズ・テイル」でも知られるニナ・キリが務める。彼女が演じるのは、超常現象を扱うポッドキャスト「The Undertone」の共同ホスト、エヴィ。懐疑派の彼女と信者寄りの相棒ジャスティン(アダム・ディマルコ)のもとに、ある日匿名の音声ファイルが届く。再生してはいけない、とわかっていても、指は止まらない。
映画が語られるとき、私たちはつい「何が見えたか」を話す。だが『Undertone』が挑んだのは、「何が聴こえたか」だ。画面に映るのは、ほぼエヴィの自宅だけ。登場人物のほとんどは、音声ファイルの声として「聴こえる」だけで、姿を見せない。Roger Ebert.comはこの演出について、「ジャンプスケアや過剰な音楽に頼らず、ネガティブスペースと傾いたカメラアングル、そして圧倒的なサウンドデザインで恐怖を構築している」と高く評価した。Colliderはこれを「あなたが今まで”聴く”ことになる、最も怖い映画」と表現している。
観客の反応は真っ二つだ。批評家が絶賛する一方、Rotten Tomatoesのオーディエンススコアは52%にとどまる。「ジャンプスケアを期待していた」「90分未満なのに退屈」という声がある反面、「人生で最も怖い映画のひとつ」「IMAXの音響で体が震えた」という熱狂的な感想も多い。本作が苦手とされるのは、あなたの想像力を武器に使ってくる映画だからかもしれない。スクリーンに映らないものが、いちばん怖い。
注目すべきは、その後日談だ。本作でトゥアソン監督はBlumhouseからオファーを受け、『Paranormal Activity 8』の監督に起用が決定。また監督自身は「トリロジーを構想している」と語っており、A24との間でシリーズ化の協議が進んでいる。低予算インディーホラーが、一夜にしてフランチャイズの芽を宿した。
映画は、2025年7月のFantasia International Film Festivalで世界初上映されたのち、2026年のSundance Film Festivalにも出品。A24が7桁のディールで全世界配給権を獲得し、今年3月に満を持して公開された。ちなみにトゥアソン監督は本作を、自分の実家で撮影している。「セラピーで話すべきかもしれない」とは、批評家たちの弁だ。
日本公開・配信については現時点で未発表。続報に注目したい。
