壁の隙間から覗くのは誰? 映画『落下音』謎解きのような本編映像解禁

第78回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、第98回アカデミー賞国際長編映画賞のドイツ代表にも選出された注目作『落下音』より、謎めいた本編映像が解禁となった。

本作は、新鋭マーシャ・シリンスキ監督が放つ、北ドイツの農場を舞台にした百年にわたる怪奇譚だ。1910年代から現代まで、異なる時代を生きる4人の少女――アルマ、エリカ、アンゲリカ、レンカ――が、同じ土地で体験する不可解な出来事と、時を超えて共鳴する「不安」を描き出す。

解禁された本編映像は、1910年代のパートから、家の使用人ベルタに悪戯を仕掛けた4姉妹の姿を捉えたもの。ベルタが倒れ込み、微動だにしなくなる不穏な空気の中、末っ子のアルマが立ち尽くす様子が映し出される。特筆すべきは、壁の隙間から覗く「誰のものか分からない視線」だ。客観と主観が交錯し、時空が歪んだかのような感覚を呼び起こすこのショットは、まさに「記憶の迷宮」を彷徨う本作の象徴的なシーンといえる。

シリンスキ監督は、この独特の映像表現について、写真家フランチェスカ・ウッドマンのセルフポートレートからインスピレーションを得たと明かしている。「彼女の写真にある、透明にきらめく幽体のような像が漂うムードに魅了されてきました。時間が経つほど記憶にヴェールがかかり、“手が届かなくなる”感覚をどう画面に宿らせるかが重要でした」

制作面では、ステディカムやピンホールカメラを駆使し、「カメラそのものが登場人物たちの身体の一部のように感じられる瞬間」を追求。その革新的なアプローチは、カンヌでの上映後、テレンス・マリックやデヴィッド・リンチといった鬼才たちの名を引き合いに出されながらも、誰にも似ていない独自の映画言語として高く評価された。

「ただ“観る”では済まない(The Rolling Tape)」「記憶の迷宮を彷徨う映画体験(The New Yorker)」と評され、世界を震撼させている本作。北ドイツの農場に積み重なった百年の孤独と、壁の向こう側から見つめる視線の正体とは。

映画『落下音』は、4月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー。

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