『サイレントヒル4』の「302号室」に戻りすぎることは、もはや自殺行為なのか。プレイヤーを裏切る“安息の地”の正体

ビデオゲームにおける「拠点」とは、本来プレイヤーが肩の荷を下ろし、傷を癒やすための聖域であるはずだ。しかし、2004年にコナミから放たれた『サイレントヒル4 ザ・ルーム(以下、SH4)』において、その常識は無残にも打ち砕かれる。

特にゲーム後半、かつての安らぎの場であった「302号室」へと頻繁に戻る行為は、プレイヤーを破滅へと誘う片道切符になりかねない。なぜ、私たちは「家に帰ること」を恐れなければならないのか。

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癒やしを奪い、牙を向く「302号室」の変貌

本作のユニークな点は、主人公ヘンリー・タウンゼントの自室がそのままハブ(拠点)として機能していることだ。前半戦において、302号室は無敵のシェルターだった。一歩足を踏み入れれば体力は全回復し、セーブポイントが優しく出迎えてくれる。

しかし、物語が折り返し地点を迎えた瞬間、この「ルール」は残酷に書き換えられる。

アパート(2回目)以降、部屋は「侵食」され始める。壁から不気味な人影がせり出し、テレビはノイズを撒き散らし、流し台からは血が溢れ出す。何より恐ろしいのは、「部屋に戻っても体力が回復しなくなる」という事実だ。それどころか、異変が発生している箇所に近づくだけで、ヘンリーの体力は削られ、コントローラーは心臓の鼓動のように激しく振動する。

「戻りすぎる」ことが招く、最悪のバッドエンド

検索窓に「サイレントヒル4 部屋に戻りすぎる」と打ち込むプレイヤーが直面しているのは、単なる恐怖演出への戸惑いだけではない。それは、本作の「エンディング分岐」という極めてシビアなシステムへの懸念だろう。

本作の結末を左右するのは、ラスボスの倒し方でも選択肢でもない。「部屋の除霊率」と「同行者アイリーンの侵食度」である。

皮肉なことに、アイテムを整理するために、あるいはセーブをするために「こまめに部屋に戻る」という善良なプレイヤーほど、部屋に居座る怨霊(ハウント)に晒されるリスクが高まる。異変を放置したまま滞在時間を増やせば、部屋の空気は淀み、ヘンリーの精神(とエンディング評価)は修復不可能なレベルまで汚染されていく。

聖燭を灯すか、それとも逃げ出すか

では、プレイヤーはどう立ち振る舞うべきか。結論から言えば、後半の302号室は「長居無用の事故物件」として扱うのが正解だ。

  • 「聖燭」を惜しまない: 異変を見つけ次第、即座に除霊アイテムを消費する。これは単なる延命措置ではなく、グッドエンディングへの「清掃活動」である。
  • アイリーンを一人にしない: ヘンリーが部屋でアイテムをこねくり回している間、廊下で待たされているアイリーンの侵食も進んでいく。

『SH4』が提示したのは、「家=安全」という全人類共通のバイアスを逆手に取った恐怖だ。部屋に戻りすぎることは、あなたが最も信頼していた場所に、ゆっくりと首を絞められる許可を与えることに等しい。

もしあなたが今、302号室の異変に囲まれて立ち尽くしているのなら、アドバイスは一つだけ。さっさと荷物をまとめて、その「穴」から飛び降りるがいい。

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