映画『罪人たち』ついに日本公開。ライアン・クーグラー初のオリジナル長編に注目集まる

全米で空前の大ヒットを記録したサバイバルホラー映画『罪人たち』(原題:The Sinners)が、ついに日本で劇場公開された。本作は、“人生最高の夜が、人生最後の夜へと変貌する”というスリリングなキャッチコピーのもと、双子の兄弟スモークとスタックが人知を超えた出来事に巻き込まれながら、仲間たちとともに夜明けまでの生存をかけて奔走する物語を描く。

公開初週で“この10年で最大のオリジナル映画オープニング成績”を達成し、辛口映画レビューサイト「ロッテントマト」では批評家98%、観客97%という驚異的な評価を獲得。観客出口調査でもホラー映画史上最高のスコアを記録しており、公開直後から各国で注目を集めている。

本作は『ブラックパンサー』や『クリード』などを手がけたライアン・クーグラー監督にとって、自身初となる完全オリジナル脚本による長編作品。物語の着想は、彼が幼少期に親しんだ叔父ジェームズとの思い出に端を発する。ジェームズはブルースを愛し、ミシシッピ州で生まれ育った人物であり、映画の舞台である1932年のクラークスデイルも彼のルーツと重なる。この作品がクーグラー監督にとって最も個人的なものとなった理由はそこにある。

舞台となるクラークスデイルは、サム・クックやジョン・リー・フッカー、マディ・ウォーターズらブルース界の巨星を生んだ街として知られ、劇中では“悪魔に魂を売った”とされる伝説的ブルースマン、ロバート・ジョンソンの逸話にも触れられている。また、登場人物の一人“プリーチャー・ボーイ”が呼び寄せてしまう存在も、ジョンソンの神話と密接に関係している。

音楽面では、メタリカの代表曲「ワン」が作品の構成に影響を与えたとクーグラー監督は語っており、同曲のドラマーであるラーズ・ウルリッヒも本作のスコア制作に参加。ジャンルを越えた音楽的背景も、映画の独自性を強調している。

また、劇中にはクーグラー監督の義父のルーツから着想を得た中国系アメリカ人夫婦グレースとボウが登場し、1930年代ミシシッピ・デルタに実在した中国人商店主たちの存在が反映されている。主演のマイケル・B・ジョーダンはホラーが苦手だったが、本作出演を通じてジャンルへの理解と親しみが深まったことを明かしている。

撮影はIMAX®70mmフィルムとウルトラ・パナビジョンを駆使して行われ、クーグラー監督はその技術的側面について、クリストファー・ノーランとエマ・トーマスから助言を得たとされる。さらに、劇中の教会に見られる“X”の垂木は、『ブラックパンサー』で主演を務めた故チャドウィック・ボーズマンへのオマージュであることが、プロダクション・デザイナーのハンナ・ビーチラーから明かされた。

参考作品としてクーグラー監督は『フロム・ダスク・ティル・ドーン』や『ファーゴ』、『遊星からの物体X』、『呪われた町』などを挙げており、それらの影響を随所に感じ取ることができる。

公開に先駆けて行われたクラークスデイルでのプレミア上映会には、監督夫妻や音楽担当のゴランソンが出席し、地元住民たちに本作を届けた。このイベントは、映画館の存在しない地域の人々にも映画を届けるというクーグラーの意志を反映した特別な機会となった。

映画『罪人たち』(原題:The Sinners)は、6月20日より新宿バルト9はじめ全国劇場にて公開中だ。

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