本当に怖いサイコホラー漫画おすすめランキング|完結・無料で読める名作も紹介【2025年】

サイコホラー漫画おすすめ

サイコホラー漫画は、静かに心を侵してくるような不気味さが魅力のジャンルだ。幽霊や怪物ではなく、人間の精神や心理の歪みが描かれることで、より現実的で深い恐怖を味わえる。本記事では、完結済みや無料試し読み可能な作品を含め、おすすめのサイコホラー漫画をランキング形式やテーマ別でご紹介。

目次

サイコホラー漫画とは?ホラー漫画との違い

漫画『ミュージアム(第1巻)』
漫画『ミュージアム(第1巻)』より

サイコホラー漫画とは、登場人物の精神状態や異常心理を中心に描かれたホラージャンルの一種。幽霊や怪物といった超自然的な存在を扱うことが多い一般的なホラー漫画とは異なり、人間の内面に潜む狂気やトラウマ、不安といった現実味のあるシチュエーションを軸としたジャンルとなっている。

編集部が選ぶ、おすすめサイコホラー漫画ランキングTOP10【2025年6月更新】

ここからは編集部が選んだおすすめサイコホラー漫画をランキング形式でご紹介。尚ランキングは編集部が独断と偏見で付けたものなのでご了承いただきたい。

1位『惡の華/押見修造』

惡の華

『惡の華』は、思春期の葛藤と逸脱を描いた青春サスペンス漫画で、2009年から2014年にかけて「別冊少年マガジン」に連載された。全11巻で完結し、アニメ化や実写映画化もされている。

物語は、中学生・春日高男がクラスのマドンナ・佐伯奈々子の体操着を盗んでしまい、それをクラスの問題児・仲村佐和に目撃されたことから始まる。仲村に支配される形で、春日は自分の欲望や社会との違和感に向き合うようになる。次第に二人の関係はエスカレートし、常識から外れた行動に踏み出していく。

本作のおすすめポイントは、思春期特有の不安定な心情や自意識を丁寧に描いているところだ。登場人物たちの感情はリアルで重く、読む側にも強い緊張感が伝わってくる。文学や哲学を感じさせる演出も特徴で、読み応えのある一作となっている。

2位『ミスミソウ/押切蓮介』

ミスミソウ

『ミスミソウ』は、いじめをきっかけにした悲劇と復讐を描くサスペンスホラー。全3巻という短さながら、読者に重い余韻を残す作品だ。

物語の主人公・野咲春花は、雪の降る田舎町に転校してきた中学生。些細なことから始まったいじめは次第にエスカレートし、ついには実家が放火され、家族を失うという凄惨な事件に発展する。心を閉ざした春花は、静かに、そして確実に復讐を始めていく。

本作のおすすめは、加害者も被害者も一枚岩ではなく、それぞれに抱える感情や事情が丁寧に描かれているところ。暴力描写や心理的な描写が容赦なく、生々しい。救いのない展開ではあるが、それゆえに人間の脆さや狂気が際立つ。読後感は決して軽くないが、濃密な読書体験を求める人には強くすすめたい作品。

3位『ハッピーシュガーライフ/鍵空とみやき』

ハッピーシュガーライフ

鍵空とみやきによる『ハッピーシュガーライフ』は、一見ピュアに見える愛情の裏に潜む狂気を描いたサイコサスペンス。全10巻で完結しており、2018年にはTVアニメ化もされた。

物語の中心にいるのは、誰からも好かれる美少女・松坂さとう。彼女はある日、幼い少女・神戸しおと出会い、「本当の愛」を知ったと信じ込む。それ以降、しおとの平穏な生活を守るためなら手段を選ばず、嘘、窃盗、殺人にさえ手を染めていく。

おすすめポイントは、可愛らしい絵柄と対照的に展開される衝撃的なストーリー。さとうの異常なまでの執着と、それに巻き込まれていく周囲の人々の崩壊ぶりが強烈な印象を残す。また、登場人物全員にどこか歪んだ愛が描かれており、どこかで読者の価値観も試される。甘さと毒が同居する、不安定で危うい世界観がクセになる作品だ。

4位『ミュージアム/巴亮介』

ミュージアム

『ミュージアム』は、雨の日に現れる猟奇殺人鬼「カエル男」と、それを追う刑事・沢村の対決を描いた全3巻のサスペンスホラー作品。2016年には小栗旬主演で映画化され、話題を呼んだ。

物語は、雨天時にのみ犯行を重ねる「カエル男」が、独自の「私刑」と称して残虐な殺人を繰り返すところから始まる。その手口は「ドッグフードの刑」「母の痛みを知りましょうの刑」など、被害者の過去や罪に基づいた異常なもので、社会に衝撃を与える。主人公の刑事・沢村は、事件を追う中で自身の家族が標的となり、極限状態での心理戦へと突入していく。

本作のおすすめポイントは、緻密な構成と張り詰めた緊張感にある。犯人の異常性と、それに翻弄される捜査陣の描写がリアルで、読者を物語に引き込む。また、全3巻という短さながら、濃密なストーリー展開で一気に読ませる力を持っている。サスペンスやホラーが好きな人なら必読。

5位『ライチ☆光クラブ/古屋兎丸』

ライチ☆光クラブ

『ライチ☆光クラブ』は、思春期の少年たちが築いた閉ざされた世界の中で、理想と狂気の境界を踏み越えていく姿を描いた耽美系サスペンス。原作は東京グランギニョルによる舞台劇で、全1巻に濃密な物語が詰め込まれている。

舞台は、煙に包まれた架空の町・螢光町。中学生9人の少年たちは「光クラブ」を結成し、禁断の知識と科学技術で人造人間ライチを生み出す。「美」を求めるクラブの頂点に立つゼラは、ライチに命じて少女・カノンをさらわせるが、彼女の存在がやがて組織の内部に亀裂を生み出す。

おすすめしたいのは、退廃的な美しさと暴力が絶妙に共存する独特の世界観。少年たちの歪んだ友情や権力闘争、理想の崩壊が緻密に描かれており、ページをめくる手が止まらない。ライチとカノンのやりとりに潜む、人間らしさへの問いかけも印象的だ。

6位『シマウマ/小幡文生』

シマウマ

小幡文生による『シマウマ』は、裏社会の復讐代行業「回収屋」を描いたサスペンス・バイオレンス漫画で、全22巻で完結している。2016年には実写映画化もされた。

主人公・タツオは、美人局で金を稼ぐ半グレ。ある日、ヤクザを標的にしたことで、仲間が惨殺される。その背後には、依頼人の恨みを暴力で晴らす「回収屋」の存在があった。タツオは自らも標的となるが、かつていじめていた男・アカにより回収屋にスカウトされ、「ドラ」と名乗ることになる。ドラは回収屋の一員として、依頼人の復讐を遂行していく。

本作のおすすめポイントは、倫理観を揺さぶる過激な描写と、緊迫感あふれるストーリー展開にある。回収屋の手口は、被害者の心をえぐるような残酷なもので、読者の想像を超える。また、ドラの成長や、回収屋の頂点「シマウマ」の正体など、物語の深みも魅力的だ。暴力と狂気が渦巻く世界を描いた、衝撃的な作品となっている。

7位『パラフィリア~人間椅子奇譚~/佐藤まさき』

パラフィリア~人間椅子奇譚~

『パラフィリア~人間椅子奇譚~』は、江戸川乱歩の名作「人間椅子」を現代の女子高生の視点から再構築した全2巻のサスペンス。

人付き合いが苦手な少女・瞳子は、憧れの生徒会長・神楽木マリの椅子になりたいという異常な欲望を抱き、その妄想を現実にしてしまう。自作の椅子に身を潜め、マリの日常を「家具」として観察する日々が始まる。椅子の中からしか見えないマリの裏の顔、そして学園内に渦巻く人間関係の歪みが、徐々に瞳子の世界を狂わせていく。彼女の異常な愛と執着が暴かれていく展開はスリリングで、先が読めない緊張感が続く。

おすすめは、猟奇的でありながらどこか切ない心理描写と、椅子という異常な視点を活かした演出。短い巻数ながらインパクトは強く、濃密な読書体験が味わえる。耽美と狂気が同居する、独特なサスペンスを求める人にぴったりの一作だ。

8位『寄生獣/岩明均』

寄生獣

『寄生獣』は、人間社会に突如現れた寄生生物と高校生・泉新一の共生を描いたSFサスペンス。1988年から1995年にかけて「月刊アフタヌーン」で連載され、全10巻で完結。累計発行部数は2500万部を超え、2014年にはTVアニメ化、2014年と2015年には実写映画化もされた。

物語は、人間の脳を乗っ取り、他の人間を捕食する寄生生物「パラサイト」が出現するところから始まる。主人公・泉新一は、右手に寄生したパラサイト「ミギー」と共生することになり、次第に人間とパラサイトの間で揺れ動く存在となる。人間社会に潜むパラサイトたちとの戦いを通じて、新一は人間とは何か、生命とは何かという問いに向き合っていく。

本作のおすすめポイントは、単なるバトル漫画にとどまらず、環境問題や人間のエゴ、共生といった深いテーマを内包している点にある。ミギーとの対話を通じて描かれる哲学的な問いかけや、新一の成長過程が読者に強い印象を残す。また、全10巻というコンパクトな構成ながら、緻密なストーリーテリングとキャラクター描写で高い評価を受けている。

9位『秘密 THE TOP SECRET/清水玲子』

秘密 THE TOP SECRET

『秘密 THE TOP SECRET』は、死者の脳をスキャンして記憶映像を再現する技術「MRI捜査」を用いて事件を解決する、近未来SFサスペンス。舞台は2060年代の日本。警察庁の法医第九研究室、通称「第九」では、凶悪事件の被害者や加害者の脳を解析し、最後に見た映像から事件の真相を探る日々が続いている。

捜査官・青木一行は、冷静かつ有能な室長・薪剛のもとで捜査に携わるが、他人の死を追体験する過酷な任務は、次第に彼ら自身の精神もむしばんでいく。事件の残酷さと、記憶の中に潜む真実の重さに直面しながら、青木は人間としての在り方に向き合っていく。

おすすめは、科学技術と人間の感情が交錯する緊張感のある構成。死者の記憶を覗くという行為に対する倫理的な問いや、プライバシー、トラウマといった現代的テーマを深く掘り下げている。美しく緻密な作画と、静かに張り詰めたストーリーが印象に残る。SF、サスペンス、ヒューマンドラマが融合した良作だ。

10位『イノサンRouge/坂本眞一』

イノサンRouge

『イノサンRouge』は、18世紀フランス革命期を舞台に、死刑執行人サンソン家の兄妹、シャルル=アンリとマリー=ジョセフの数奇な運命を描いた歴史大河漫画である。前作『イノサン』の続編として、2015年から2020年にかけて『グランドジャンプ』誌上で連載され、全12巻で完結した。

物語は、王政の崩壊とともに激動する時代の中で、兄シャルルが「万人を平等に処刑する」ためにギロチンの開発に携わり、妹マリーが革命の理想に共鳴し民衆の側に立って戦う姿を描く。二人の対照的な生き方が、血塗られた歴史の中で交錯し、やがて悲劇的な結末へと向かっていく。

本作のおすすめポイントは、繊細かつ緻密な作画と、死と生、正義と罪、自由と権力といった重厚なテーマを深く掘り下げたストーリーテリングにある。特に、死刑執行人という職業に対する社会の偏見や、革命の名のもとに行われる暴力の正当化など、現代にも通じる問題提起が随所に点在。歴史漫画としての完成度が高く、読む人に深い思索を促す作品だ。

完結済みのサイコホラー漫画【一気読みしたい人向け】

最後まで一気に読み切れる完結作品は、物語の完成度や読後の余韻をじっくり味わいたい人におすすめ。ここでは、最後まで読み応えのある完結済みの名作を紹介。

『イキガミ/間瀬元朗』

イキガミ

『イキガミ』は、国家による極端な政策を通じて「生きる意味」を問う社会派サスペンス。2005年から2012年にかけて連載され、全10巻で完結。2008年には松田翔太主演で実写映画化された。

物語の舞台は、国家繁栄維持法(通称:国繁法)が施行された架空の日本。この法律のもと、国民は小学校入学時に予防接種を受け、1000人に1人の確率で18歳から24歳の間に死亡するナノカプセルが注入される。対象者には死の24時間前に「逝紙(イキガミ)」と呼ばれる死亡予告証が届けられ、彼らの最期の1日が描かれる。主人公・藤本賢吾は、区役所でイキガミを配達する公務員として、死を宣告された若者たちの姿を見届けることになる。

本作のおすすめポイントは、死を目前にした人々の24時間を通じて、人間の本質や社会の在り方を深く掘り下げている点にある。各エピソードはオムニバス形式で進行し、音楽家、教師、政治家志望者など、さまざまな背景を持つ人物たちが登場。彼らの選択や行動が、読者に強い印象を残す。また、藤本自身も制度への疑問や葛藤を抱えながら成長していく姿が描かれ、物語に深みを与えている。

『殺戮モルフ/小池ノクト』

殺戮モルフ

小池ノクト(作画)と外薗昌也(原作)による『殺戮モルフ』は、突如現れた異形の殺人鬼と、それに巻き込まれる女子高生の恐怖を描いたスプラッターホラー。2017年から2019年にかけて『ヤングチャンピオン』で連載され、全4巻で完結している。

物語は、池袋の繁華街で女子高生・村崎まどかが、顔を覆面で隠した謎の男による無差別殺人事件に遭遇するところから始まる。男はまどかを素通りし、周囲の人々を次々と惨殺。逮捕されたはずの男の幻影が、その後もまどかの前に現れ、再び殺戮が始まる。彼女は現実と幻覚の狭間で恐怖に苛まれながら、事件の真相に迫っていく。

本作のおすすめポイントは、圧倒的な暴力描写と不気味な雰囲気が織りなす緊張感にある。殺人鬼の異常性と、まどかの心理描写が巧みに描かれ、読者を物語に引き込む。また、全4巻という短さながら、濃密なストーリー展開で一気に読ませる力を持っている。スプラッターホラーやサスペンスが好きな人にとって、満足度の高い作品だ。

『自殺島/森恒二』

自殺島

森恒二の『自殺島』は、自殺未遂を繰り返した者たちが送り込まれる孤島を舞台に、生と死の境界を描いたサバイバルドラマである。2008年から2016年にかけて『ヤングアニマル』で連載され、全17巻で完結している。

物語は、政府によって「自殺未遂常習者隔離目的特別自治区」、通称“自殺島”に送られた主人公・セイが、同じ境遇の人々と共に過酷な環境での生活を強いられるところから始まる。島には法律もインフラも存在せず、死ぬも生きるも自由。セイたちは、狩猟や農耕、漁労などを通じて自給自足の生活を始め、生きる意味を模索していく。

本作のおすすめポイントは、極限状態での人間の心理描写と、リアルなサバイバル描写にある。作者自身が実際に狩猟や漁労を体験し、それを作品に反映させているため、生活の描写に説得力がある。また、登場人物たちが過去のトラウマや社会からの疎外感と向き合いながら成長していく姿が描かれ、生きることの意味を深く考えさせられる作品となっている。

無料で読めるサイコホラー漫画【試し読みOK】

電子書籍プラットフォームでは、一部無料で試し読みできるサイコホラー作品が多く存在する。『グリマス』『インゴシマ』『不安の種』などは、ヤンマガWebやピッコマ、LINEマンガなどで冒頭数話を無料公開していることも。まずは気軽に読み始め、作品の雰囲気や心理描写に触れてみることもおすすめ。

『8番出口/田村光久』(一部無料)

田村光久による漫画『8番出口』は、2025年5月より『週刊コロコロコミック』にて連載が開始された新作。本作は、インディーゲーム『8番出口』を原作としており、ゲームのコンセプトを踏襲しつつ、漫画としての表現がなされている。

原作ゲーム『8番出口』は、地下鉄の駅を舞台に、「異変」を見つけつつ出口を目指すというウォーキングシミュレーター。漫画版となる本作では、バスケットボール部の練習帰りに地下通路に迷い込んだ若者が、通路内で異変に遭遇するというオリジナルのストーリーが展開されている。

作中では、通路内に掲示された「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から出ること」といった案内に従い、登場人物が行動する様子を描く。『週刊コロコロコミック』公式サイトにて第1話が無料で公開中。

『グリマス/活又ひろき』(一部無料)

グリマス

活又ひろきの『グリマス』は、全3巻で完結したサスペンスホラー漫画。舞台は「高宮サニーマンション」。引っ越してきた城谷一家は、「オーナーの前では笑顔でいなければならない」という不可解なルールに直面する。住人たちは常に笑顔を崩さず、その背景には恐怖による支配が存在していた。

このルールを破った者は、次々と不可解な死を遂げていく。やがて一家は、オーナーが人ならぬ力を持ち、住民を監視・支配している事実に気づく。逃げ場のないマンション内で住民たちの理性が崩れ、恐怖と狂気が連鎖していく。

おすすめは、閉鎖空間ならではの密室的な緊張感と、規則に縛られる社会の不条理を反映した設定。全3巻ながら展開は濃密で、伏線や真相がテンポよく回収される。ホラーとスリラーが融合した、短編ながら読み応えのある作品だ。

『インゴシマ/田中克樹』(一部無料)

インゴシマ

田中克樹(作画)・天下雌子(原作)による『インゴシマ』は、修学旅行中の高校生たちが漂着した“地図にない島”での過酷な生存劇を描くサバイバルサスペンス。彼らが辿り着いたのは、原住民「シマビト」が支配する文明から隔絶された島だった。言葉も価値観も通じない彼らに捕らえられた生徒たちは、逃げ場のない環境で命のやりとりを強いられる。

島には支配と暴力、そして異常な階級制度が存在しており、生き残った者たちは少しずつその構造を知っていく。敵はシマビトだけではなく、同じ漂着者同士の間にも不信や対立が広がっていく。

おすすめは、絶望的な状況でむき出しになる人間の本性と、緻密な作画が生み出す緊迫感。サバイバルと群像劇が絶妙に絡み合い、読むたびに登場人物の選択が問いかけとなって返ってくる。極限状態のドラマをじっくり味わえる一作だ。

『不安の種/中山昌亮』(一部無料)

不安の種

中山昌亮による『不安の種』は、2002年から2005年にかけて『チャンピオンRED』(秋田書店)で連載された短編ホラー漫画。全3巻で構成され、各話が独立したオムニバス形式で展開される。日常生活の中に突如現れる異形や怪異を描き、読者に不安を植え付ける作品だ。

物語では、視界の隅に映る謎の存在や、説明のつかない現象など、恐怖の核心が明かされないまま終わる話も多い。そのため、読者の想像力を刺激し、じわじわと不気味さが積み重なっていく。

おすすめは、短編特有のテンポの良さと、明かされない恐怖を活かした不安感。具体的な説明がないからこそ、ページを閉じた後にも不気味さがじわじわ残る。続編として『不安の種+』や『不安の種*』も刊行されており、シリーズ全体で独特の空気感を引き継いでいる。

『外れたみんなの頭のネジ/洋介犬』(一部無料)

外れたみんなの頭のネジ

『外れたみんなの頭のネジ』は、2015年から2023年までアプリ「GANMA!」で連載された、全18巻のサイコホラー漫画。オムニバス形式で構成されており、現代社会に潜む狂気と不安を描いた短編エピソードが次々と展開される。

物語の主軸となるのは、女子中学生・七尾ミサキ。ある日、自分の周囲の人々が徐々に異常な言動を見せ始めることに気づく。やがて「べへりん」と名乗る謎の存在が現れ、狂気を認めさせるよう迫る。ミサキはその指示に従うが、周囲の異常は次第にエスカレートし、自身の正気さえ疑い始める。

本作のおすすめポイントは、日常と非日常の境界が曖昧になる描写と、読者の想像力を刺激する構成にある。また、2021年にはYouTubeでアニメ化されるなど、メディア展開も行われている。独特の世界観と緊張感が魅力の作品だ。

グロ描写が強烈な作品【閲覧注意】

内臓、損壊、流血など過激な描写が視覚に訴えかけてくる作品は、読み手に強烈なインパクトを残す。ここでは、グロテスクな表現を含みながらも、物語としての完成度が高い注目作を紹介する。過激な表現が苦手な人はご注意を。

『ハカイジュウ/本田真吾』

ハカイジュウ

『ハカイジュウ』は、2010年から2017年にかけて『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載された全21巻のパニックホラー漫画。物語は、東京都立川市を舞台に、突如発生した巨大地震とともに出現した謎の怪生物「ハカイジュウ」による壊滅的な災害と、生き残った人々の極限状況を描く。

主人公・鷹代陽は、地震によって崩壊した校舎から脱出する際に、異形の怪物を目撃する。生徒会長の白崎奈央と共に街へ逃げ出すが、そこはすでに怪物によって支配され、地獄絵図と化していた。陽たちは他の生存者と協力しながら、怪物から逃れ、街からの脱出を試みる。その中で、陽は幼馴染の藍沢未来が修学旅行で立川に来ていたことを知り、彼女を探し始める。

本作のおすすめポイントは、予測不能なストーリー展開と、緻密に描かれた迫力満点の作画だ。また、個性豊かなキャラクターたちが物語を盛り上げ、読者を引き込む。都市型モンスターパニックとして、圧倒的なスケールと緊張感を味わえる作品となっている。

『エデンの檻/山田恵庸』

エデンの檻

『エデンの檻』は、2008年から2013年まで『週刊少年マガジン』で連載された全21巻のサバイバル・アクション漫画。物語は、修学旅行中の飛行機事故により、主人公・仙石アキラたちが地図に存在しない謎の島に墜落するところから始まる。目覚めた彼らを待ち受けていたのは、絶滅したはずの古代生物が闊歩するジャングルだった。

アキラは幼馴染の赤神りおんやクラスメイトと共に、猛獣や自然の脅威、そして人間同士の対立といった過酷な状況に立ち向かいながら、生き残るためのサバイバルを繰り広げる。物語が進むにつれて、島の正体や絶滅動物の存在理由など、数々の謎が明らかになっていく。

本作のおすすめポイントは、緻密な作画で描かれる迫力あるアクションシーンと、絶え間ない緊張感が続くストーリー展開。また、登場人物たちの心理描写や成長も丁寧に描かれており、読者を惹きつける要素となっている。サバイバル漫画の中でも、特にスリリングな展開を楽しみたい人におすすめの一作だ。

読者層別おすすめ作品【青年・少女向けなど】

読む人の背景や関心によって、響く作品は異なる。サイコホラーは表現の幅が広く、重厚で社会性のあるものから、繊細で感情に訴えるものまで揃っている。ここでは、青年・少女向けそれぞれにおすすめのサイコホラー作品を紹介する。

青年向け『シグナル100/宮月新』

シグナル100

『シグナル100』は、2015年から2016年にかけて『ヤングアニマル』(白泉社)で連載された全4巻のサスペンス・ホラー漫画。2020年には橋本環奈主演で実写映画化され、話題を呼んだ。

物語は、私立聖新高等学校2年C組の担任教師・下部が、クラスの生徒たちに対して「自殺暗示催眠」をかけることから始まる。この催眠は、歩く、食べる、笑う、泣くなど、日常的な行動がトリガーとなり、自殺を引き起こすもので、合計100の禁止行動が設定されている。催眠を解く方法は、クラスメート全員の死を見届けることのみ。生徒たちは、生き残りをかけた極限状態のデスゲームに巻き込まれていく。

本作のおすすめポイントは、日常の行動が死に直結するという斬新な設定と、極限状況下での人間の心理描写。また、全4巻というコンパクトな構成ながら、緊張感あふれる展開が読者を引き込む。サスペンスやデスゲーム系の作品が好きな人におすすめの一作である。

青年向け:『アポカリプスの砦/イナベカズ』

アポカリプスの砦

『アポカリプスの砦』は、全10巻で完結したサバイバルホラー。舞台は、冤罪で少年院に送られた前田義明が収容される松嵐学園。ある日、施設内で突如ゾンビ感染が発生し、孤立した少年院は地獄と化す。

前田は、個性の強い他の収容者たちと共に、武装してゾンビに立ち向かう。物語は、学園内での戦闘だけでなく、やがて感染の発生源や国家的な陰謀にも迫っていく。過酷な環境下で、少年たちは互いに信頼を築き、生き延びる術を模索していく。

おすすめは、閉鎖空間の不穏な緊張感と、破壊力あるバトル描写。少年漫画らしい熱量に加えて、陰謀や人体実験といった重いテーマも盛り込まれており、読み応えは十分。ゾンビ作品の中でも異色の一作だ。

少女・女性向け:『ぼくらのへんたい/ふみふみこ』

ぼくらのへんたい

『ぼくらのへんたい』は、2012年から2016年まで『COMICリュウ』で連載された全10巻の作品。物語は、女装趣味を持つ3人の中学生男子—まりか(青木裕太)、ユイ(木島亮介)、パロウ(田村修)—が出会うことから始まる。

それぞれが異なる理由で女装をしており、まりかは「女の子になりたい」という純粋な願望、ユイは亡き姉の代わりとして母を慰めるため、パロウは過去のトラウマと恋愛感情から女装を続けている。彼らは互いの事情を理解し合いながら友情を深めていくが、次第に複雑な恋愛感情が交錯し、関係性が揺れ動いていく。物語は、思春期の葛藤や性自認、家庭環境など、繊細なテーマを丁寧に描写している。

本作のおすすめポイントは、可愛らしい絵柄と対照的な重厚なストーリー展開。登場人物たちの内面の葛藤や成長がリアルに描かれており、読者の心に深く響く。性別やセクシュアリティに関するテーマを扱いながらも、普遍的な人間ドラマとして多くの読者に共感を呼ぶ作品となっている。

少女・女性向け:『さよならミニスカート/牧野あおい』

さよならミニスカート

牧野あおいによる『さよならミニスカート』は、2018年から『りぼん』および『少年ジャンプ+』で連載された少女漫画で、2024年9月現在、既刊3巻。本作は、アイドル文化やジェンダー観に鋭く切り込む異色の作品として注目を集めた。

物語は、人気アイドルグループ「PURE CLUB」の元センター・雨宮花恋が、握手会での傷害事件をきっかけに芸能界を引退し、神山仁那として新たな高校生活を始めるところから始まる。彼女は、髪を短く切り、スラックスで通学し、過去を隠して日々を送るが、事件の犯人は未だ捕まっておらず、彼女の心には深い傷が残っている。

本作のおすすめポイントは、少女漫画の枠を超えた社会的テーマの掘り下げにある。「女らしさ」や「可愛らしさ」といった固定観念に疑問を投げかけ、性的消費やセカンドレイプといった現代社会の問題をリアルに描写している。また、サスペンス要素も加わり、読者を引き込む展開が魅力。

まとめ|心に残る恐怖を味わいたいならサイコホラー漫画を

サイコホラー漫画の本質は、読者の精神を揺さぶる構成と、登場人物の歪んだ感情を通して生まれる「心の恐怖」にある。今回紹介した作品は、いずれも心理的な緊張感や倫理の崩壊を巧みに描き、読後にも強い印象を残すものばかり。気になるタイトルがあれば、まずは一歩踏み出し、その狂気の世界に触れてみてほしい。

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