
思春期という、人生で最も不安定かつ残酷な変容期を「ボディ・ホラー」として描き出す、野心的な一作が誕生した。新鋭チャーリー・ポリンジャー監督の長編デビュー作『The Plague(原題)』が、2025年12月24日より米限定公開を迎える。
本作の舞台は、水球キャンプに参加する12歳から13歳の少年たちのコミュニティだ。主人公のベン(エヴェレット・ブランクロ)は、両親の離婚に伴う転居を経て、社会的な不安を抱えながらこのグループに加わる。指導者である「ダディ・ワグス」(ジョエル・エドガートン)を敬い、勝ち気で審判的なチームメイトたちに馴染もうと苦心するベン。しかし、彼はグループ内のリーダー格であるジェイク(カヨ・マーティン)から屈辱的な扱いを受け、やがて「ザ・プレイグ(疫病)」と呼ばれる不気味な噂を耳にする。それは、疎外された少年エリが患っているとされる比喩的な病だが、次第にそれは比喩を超えた現実味を帯びていくことになる。
カンヌ国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに、世界各国の映画祭を席巻してきた本作は、すでに批評家からも高い評価を獲得している。インディペンデント・スピリット賞では作品賞、主演俳優賞(エヴェレット・ブランクロ)、ブレイクスルー俳優賞(カヨ・マーティン)にノミネート。さらにクリティックス・チョイス・アワードでもブランクロが最優秀若手俳優賞に名を連ねるなど、キャスト陣の渾身の演技が光る。
監督のポリンジャーは、本作を「半自伝的プロジェクト」と位置付けている。自身の短編『Sauna』(2017年)で探求したテーマを拡張させ、10代特有の社会的な帰属意識、変化し続ける道徳観、そして身体的な変容への恐怖を、35mmフィルムの質感で見事に捉え切った。不穏な息遣いを重ねたスコアと、息を呑むような水中シークエンスが、観客をダークで没入感のある体験へと誘う。
多くの人々が記憶から消し去りたいと願う「思春期」という嵐を、単なるトラウマの記憶ではなく、映画的なリソースとして昇華させたポリンジャー。彼はすでに次作『The Masque of the Red Death(原題)』への着手も報じられており、今最も動向を注視すべき新星の一人と言えるだろう。
映画『The Plague(原題)』は2025年12月24日より米限定公開、2026年1月2日より全米拡大公開予定。日本公開の朗報にも期待したい。
