綾野剛主演『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』公開中、元ネタはあの教師いじめ事件──“事実”とは何かを問う社会派ドラマ

綾野剛主演の社会派ドラマ映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』が、6月27日から全国公開中だ。元ネタとなるのは2003年に福岡で起きた“教師によるいじめ”とされる事件。当時「殺人教師」とまで報じられ、全国的にバッシングを受けたひとりの小学校教諭をめぐる騒動が、本作であらためて掘り起こされている。

原作は清水潔によるノンフィクション『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』。当時の報道と教育委員会の判断が、どれほど不確かなものだったのかを徹底的に取材した一冊であり、映画版でもその問題点が軸になっている。綾野剛は、世間から糾弾される教師を冷静に演じ、その人物像に“疑い”と“信頼”の両面を与えている。

監督を務めたのは三池崇史。『悪の教典』や『土竜の唄』などでも知られるが、今作では過剰な演出を控え、あえて抑制のきいた映像と言葉で、事実と信じられてきた“物語”の裏を静かに突いていく。三池監督は公開に際し、「これは“真実の映画”ではない。だが、見た人が“自分だったらどうするか”を考えるきっかけにはなる」と語っている。

作品内では、当時の週刊誌やワイドショーの報道が再現され、教師の行動がどのように“いじめ”として構成されていったのかが明らかになる。一方で、映画は加害者か被害者かを断定しない。登場人物たちの目線を通し、観客に“判断”を委ねる構成になっている。

報道や世論がひとつの方向へ傾いたとき、そこに取り残されるものは何か。『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』はその問いを、静かだが重いトーンで突きつけてくる。観る側にとっても、“報じられたこと”と“実際に起きたこと”の差を見極める力が問われる作品だ。

映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』は、6月27日より全国劇場で公開中。

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